アメリカの今 〜トランプ氏の当選後〜

アメリカの今 〜トランプ氏の当選後〜

トランプ氏の勝利が発表された日、カナダへの移住のサイトがアクセス集中によりダウン。

「カナダよ、カナダこそ壁を作り始めた方がいいんじゃないの(笑)」なんて言う友達のつぶやきに笑えていたのは一瞬でした。

楽観視できず、笑えない事態になっていることを感じています。

 

 

カリフォルニア州の高校でスペイン語/英語を教えているアメリカ人の友人が投票結果が出た後にしたSNSの投稿を見て、驚きました。

私が知っている彼女は強い女性ですが、「授業で泣いた」と彼女が書いているのを見たとき、私ははじめ、誇張表現ではないかと思いました。けれども、どうやらそれは大げさな話ではなく、深刻な事態としてアメリカを覆い始めていることに私は気づき始めました。以下引用です。※許可を得ています

Julie's post

 

今日はどの授業でも泣いてしまいました。生徒たちと色々な話をしました。どうしてこうなってしまったのか、
どうしたらお互いに思いやりを持った行動をとり支え合うことができるのか。
そんなことを話し合えたことで、今日起こったことを理解して飲み込むことがなんとかできています。
気分がマシになったとか、安心したとか、希望があるなんて言えないけど。
でも生徒たちの目は、教員が前を向いて進まなければいけないと言っています。
私たちが彼らのためにできることは、不安や疑問を安心して声に出せる場所、
そして何より排除されるのではなく愛されていると感じられる場所を提供することです。
私たちの国が前に進んでいくために、教育が今以上に必要とされているときはありません。

 

そして彼女は教室のドアに生徒たちに宛てた手紙を掲載しました。全てトランプ氏の発言へ反語する形で書かれています。

dear-students

「不法移民」の生徒たちへ
この教室には、壁はありません。あなたは私たちと共にいます。あなたは愛されています。

黒人の生徒たちへ
この教室では、あなたは大切な人です。あなたは愛されています。

イスラム教徒、中東の家系の生徒たちへ
みんなあなた達がテロリストだなんて思っていません。あなたは愛されています。

メキシコ人の生徒達へ
あなた達は強姦犯や麻薬密売人ではありません。あなたは愛されています。

女子生徒へ
男性はあなた達を好きなようにさわったりできません。男性は女性を尊重するのです−当然のことです要求しなさい。あなたは愛されています。

LGBTQ性的マイノリティーの生徒たちへ
あなた達はありのままで、そのままで完璧です。あなた達は愛されています。

全ての生徒達へ
私たちは今日この日、この年を一緒に乗り越えます。私たちはお互いを尊重してお互いから学びあいます。あなた達一人一人がこの国の、このコミュニティーの大切な一部です。

愛を込めて                   ターマン

 

 

これだけの差別発言をして当選したなんてにわかには信じられません…。

でも、それでも遠く離れた日本にいる私の目には、実は最初に彼女の投稿を見たときはまだ「ちょっと重く受け止めすぎなのかな」という印象として映ったのです。

けれどもその後この手紙は、彼女の生徒がその手紙をツイッターに載せたことで、その生徒曰く”ウイルス感染みたいに広がっちゃった”というほどに、170,000回以上のリツイートをされ、そしてCNNエスパニョールで報道されるまでに広がっていきます。それを受けて友達は「恐怖を感じている私の生徒たちと同じ気持ちのアメリカ人たちに共鳴されたっていうことなのかな」と言っていました。CNN

 

そして私も、その後アメリカで起こっていることを知るうちに、私は彼女の言っていることが大げさなことでも悲観しすぎているわけでもないことを知ります。文字通り多くの人が涙し、恐怖で震えている現実が見えて来ました。私が衝撃を受けて眉をひそめたのは、トランプ氏が当選してから、アメリカ国内であった差別発言をまとめたページを見たときでした。抜粋して載せてみます。

 

 

* * * * * * * * * *

トランプのアメリカ 1日目

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-29-47

私はスカーフをつけていて、プラットフォームで通りすがった人が言いました。「終わりだよ、お嬢ちゃん」

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-31-02

ロスの路上で、僕のメキシコ系アメリカ人の同僚に誰かが叫んだんだ。「来た元の場所に戻りな」

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-34-36

母親がさっき本当にメールして来た。「お願いだからヒジェブ(イスラム教徒のスカーフ)はつけないで」母親はうちの家族で一番信心深い人なのに…

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-39-53

イスラム教徒の友達3人が、それまで一度もヒジャブを取ったのを見たことないのに、昨日は被らずに来た。危ないからって。

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-42-57

今日、私のことをメキシコ人だと思った年配の白人が嫌がらせをして来た。「お前らをレイプして、これから俺らが作るでっかい壁の向こう側に送り返すようにトランプが言ってくるのが待てないぜ。」彼は言い終わった後、コップの水を私の顔にかけて、中指を立てて走り去っていった。その人を追いかけて言い返さないように自分を抑えるのにすごい努力が必要だった。涙が止まらない。女性であること、マイノリティーであることをこんなに恐怖に思ったことはこれまで一度もなかった。

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-21-13

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-21-30

ハーイ、マリア。トランプが勝ったね、ってことでこれから起こることの予告。#壁 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-22-09

寮の部屋に帰って、心が痛みでぎゅーっとなった。

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-20-23-18

ノースカロライナの彼らの車に乗せられてたもの

真の大統領によって、君たちの「結婚」とやらが覆されるのが待てないよ。ゲイ家族=地獄に落ちろ #トランプ2016

 

* * * * * * * * * *

このページで紹介されている出来事は、アメリカのそこらかしこで誰もが目にするほど頻繁に起こっていることではないとは思います、思いたいです。(もしそれほど頻繁に起こっているとすれば、これほどリツイートもされるほどニュースにはならないと予想するからです)。そして、何度もリツイートをされているそれぞれのつぶやきへはそれこそ無数の返信がなされていることも希望に思えます。「そんなこと思っている人ばかりじゃないよ。あなたは大切な人だよ。」「そんなことを言う人がいたなんて本当に残念だ。」と言うような思いやりのあるコメントが、全部読むことができないほどの数なされています。

 

 

この大統領選後の出来事やその後の出来事に目をやりながら思ったことがあります。

 

アメリカという国は、私が知る限り、差別発言を決して許さない国です。…けれども、アメリカという国に留学していた気になっていた私が、様々な人種の割合のバランスが取れているカリフォルニアで見て来たものと、今回トランプ氏に票を投じた層(主に白人労働者or中間層)の人口が多い州は、同じ「アメリカ」ではないのかもしれないと言うこと。カリフォルニア州で私が見聞きしてきたことは、決してアメリカの一般的な姿ではなかったのかもしれません。けれどもアメリカという国は、私が知る限り、差別発言を決して許さまいと努力を重ねて来た国です。人種に関すること、差別的な言動は極度にセンシティブな話題で、人は例え思っていても口にしたりしません。特定の人種やマイノリティーに対してそんな発言をすることは、社会的自殺に等しいほどです。(5年前にアジア系の学生を模して”チンチョン”と言葉を真似た動画をYoutubeに挙げ大問題になったUCLAの学生は学校を退学しました。※常識的感覚を持っているアメリカ人にとってアジア系の言葉を真似た音を発することはとても不適切な行動とされています。)

ただし「差別的発言をしない」と言うことと、「差別意識がない」と言うことはイコールではなかったことも知っています。「人種による差別や格差の実態が社会に存在していない」というのも嘘です。人種による格差は目の前に現に存在していたし(数え切れないほどのホームレスの人を見ましたが、黒人とヒスパニック系がほぼ100%でした)。また、日常的に見たのは、同じ人種のもの同士(白人なら白人と、アジア系ならアジア系と、黒人なら黒人と)が肩を寄せ合って行動している姿でもありました(ドラマの中のように色々な人種が混ざり合って友達同士で行動していると言うのを、意外に見なかったのです)。こんな話も聞きました。南部の州(歴史的にも是奴隷制度だった州)出身の白人の人が、アジア系の恋人と一緒に帰省したら、地元の知人が面と向かって”What are you?”(すごく失礼なニュアンスの「あんたどこの者?」と言う感じ)で言われたと言うのです。私にその話をしてくれたアジア系の子は、心底信じられないと言うふうに顔を真っ赤にして憤慨していました。だから、そんなに理想通りにはこれまでも行っていなかったのも分かっています。でもそれでも私が見て来たアメリカは、どの人種も上下なく平等であるべきと言う前提を大切にし、理想に近づけようと努力していました。私が知る限り、人種差別的発言が一番問題視され、恥ずべき行動だとされている社会はアメリカです。

 

 

実は、上で紹介した「トランプのアメリカ 1日目」のサイトに載っていたのは、トランプ氏に票を入れた側から受けた被害だけではなく、トランプ氏に票を入れた側が受けた被害も一つ紹介されています。出典:※「トランプに票を入れた奴だ」と白人男性が殴る蹴るの暴行を受けています。暴力的な動画なので、このページには載せません

 

大統領が決まったことを受けて、「国民の分断」と言う言葉や「国民の融和を図る」と何度もアメリカのトップが発言しているのをテレビで聞きましたが、本当に文字通り、本当に文字通りに分断が深刻化、表面化しているように見受けられます。

 

 

ここにアメリカの出口調査の興味深い結果があります。

CNNの出口調査の結果です。たくさんある統計の項目の中の一部抜粋ですが、人種によってはっきりと別れた意思表示の結果が現れているようにも見えます。※出口調査に人種を問う項目が当然のようにあることに、人種というアイデンティティーが社会において影響が大きいことが伺えます。

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-22-56-51

 

 

今回トランプ氏が当選したことで危惧されるのは、政治的な手腕もですが、「差別的発言や行動はしても大丈夫なことなのだ」と言う空気が広まることなのではないかと思いました。トランプ氏の当選を押した一因もマイノリティーへの差別意識が少なからずあったことも伺えます。そしてトランプ氏が当選したと言う結果自体も、パンドラの箱を開けるように、これまで封印されてきた色々な負の感情を放出する免罪符のようになっているようにすら見えます。

 

そして同時に、この一連の流れを受けて、「トランプ氏に投票した割合が一番多い白人男性」の大きなうねりに埋もれた声も漏れ聞こえて来ます。「差別主義者だとレッテルを貼られている。誰も擁護してくれない。」

 

 

 

なんだか書いていて、調べれば調べるほど、暗い気持ちになりました。

でも、そんな中で見つけたちょっと目を覚まされる投稿

 

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-12-23-30-25

トランプに投票したのなら愛してる!ヒラリーに投票したのなら愛してる!たとえ投票に行ってなくても愛してる!
私たちはもっと愛を広げなきゃ、憎しみじゃなくてね!

 

 

なんだか、少しこの投稿が希望の光にも思えました。

 

 

 

そしてこんな毎日新聞の記事も見つけました。

サブウェーセラピー

【ニューヨーク國枝すみれ】「一緒に乗り越えよう」--。米ニューヨーク・マンハッタンの地下鉄通路の壁一面に、大統領選のドナルド・トランプ氏(70)の勝利にショックを受けた市民らがメッセージを書いた付箋が張られている。

 

 「サブウエーセラピー(地下鉄心理療法)」と呼ばれており、通勤客らが壁に張り付けた付箋は約6000枚。それを読む市民も励まされる仕組みだ。

 「これは私なりの壁、愛の壁」「イスラム教徒、トランスジェンダー、女性。私たちはあなたたちを愛している。どうか安全でいて」

 不法移民対策のためメキシコとの国境に壁をつくると公約し、女性らに対する差別発言を繰り返したトランプ氏への対抗メッセージもある。

 企画を始めたマシュー・チャベスさん(28)は「愛に関するメッセージが多い。みんな前を向いて歩き出したいのだ」と説明。メッセージを熟読していたジル・ダナフューさん(27)は「とても元気づけられた。2日間つらかった。今夜は眠れる」と話した。

 一方、バーテンダーのブライアン・ラミレスさん(24)は「最悪の大統領を選んだ。立ち直れるかどうか分からない」と涙をぬぐった。

ニュースサイトで読む: Copyright 毎日新聞

 

誰もがより良い未来のためにと投じた票の結果。
これからこの国が向かう方向が、明るいものでありますように